半導体製造装置の分野で世界的な競争が激化する中、東京エレクトロンは米ラムリサーチに対抗するために、高層3D NAND型フラッシュメモリー(3D NAND)の製造における重要な工程である「チャネルホールエッチング」に関する新技術を開発したと発表しました。
チャネルホールエッチングとは
3D NANDは、メモリセルを積層することで容量を増やすことができるフラッシュメモリの一種です。
積層数が増えると、メモリセルにアクセスするための穴(チャネルホール)を掘る際に、深さや均一性が課題となります。
これまで、この工程ではラムリサーチが独占的に提供していた「カーボンマスクエッチング」という技術が用いられていました。
この技術は、カーボンをマスクとして使用して穴を掘るものですが、カーボンの除去や再配置に時間がかかり、また温室効果ガスの排出も多いという欠点がありました。
ラムリサーチの独占を崩す新技術「カーボンレスガスエッチング」
東京エレクトロンが開発した新技術、「カーボンレスガスエッチング」は、従来ラムリサーチが独占していた「カーボンマスクエッチング」に対する一石を投じています。
この技術は、特定の工程においてカーボンの使用を排除し、特殊なガスで穴を掘る方法を採用しています。
効率とスピードの向上
従来のエッチング技術に対して2.5倍の高速性を持つこの新技術は、深さ10μm、400層以上の3D NANDメモリにも対応可能です。
これにより、従来の技術では時間がかかったプロセスが大幅に短縮され、コストも削減されます。
環境への影響を大幅削減
もう一つの特筆すべき点は、この新技術によって温室効果ガスの排出が84%も減少することです。
これは環境負荷の大幅な削減をもたらし、持続可能な生産を可能にします。
ビジネス戦略と新製品の展開
東京エレクトロンは、革新的な「カーボンレスガスエッチング」技術を用いた新型エッチング装置「TEOS」を近く市場に投入する予定です。
この製品を使って、特に3D NAND市場におけるシェアを拡大し、さらには半導体製造装置全体の競争力を高める目的があります。
市場逆転の可能性と予測
東京エレクトロンは、2027年までにNANDのチャネル工程向けエッチング市場が現状の5倍に拡大すると見込んでいます。
もし競合であるラムリサーチが適切な対抗策を打たなければ、市場でのシェアは逆転する可能性が高いとされています。
長期的な研究開発とその成果
東京エレクトロンは、過去5年で研究開発費を77%増加させるなど、短期的な市場変動に影響されずに積極的な投資を続けています。
さらに、AI技術を活用した製造工程の効率化にも成功しており、その戦略が業績に大きく貢献しています。
業界への全体的影響
専門家によると、この新技術によって数千億円規模の増収効果が見込まれます。
東京エレクトロンの長期的な戦略と革新的な技術は、半導体業界全体にポジティブな影響を与え、新たな市場構造を生む可能性が高いです。
まとめ
東京エレクトロンの新技術と戦略は、半導体産業において市場シェアの逆転と増収効果をもたらす可能性が高いと評価されています。
持続的な研究開発と斬新な製品開発により、業界全体に対して重要な影響を与えることが期待されます。
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