買収の背景と目的
大成建設は、中堅ゼネコンのピーエス三菱を株式公開買い付け(TOB)を通じて子会社化する計画を明らかにしました。
これは、建設業界における人手不足の問題に対応するための動きであり、特に「2024年問題」として知られる残業規制の適用に伴う人材確保の必要性に応えるものです。
買収額は約200億円と見込まれています。
大成建設によるプレスリリース概要
大成建設株式会社は、戦略的な公開買付け(TOB)を通じて、株式会社ピーエス三菱の過半数の株式を取得することを決定しました。
この買収は、ピーエス三菱を大成建設の連結子会社に変え、双方の企業価値の向上を目指します。
資本業務提携の展望
大成建設はピーエス三菱との間で資本業務提携契約を結び、買収後の経営協力と相乗効果の創出に関する計画を策定しています。
両社の協働により、建設、土木、製造分野での技術力と市場競争力を高め、経営資源の最適化を図ります。
経営体制と株式の取り扱い:経営陣据え置き・上場維持方針
買収に伴う直接的な経営陣の変更は予定されておらず、ピーエス三菱の株式は引き続き上場を維持します。
買収価格と株式取得計画
提案された買付価格は1株あたり1,010円で、これはピーエス三菱の近日の株価に対して約25-30%のプレミアムが加えられた額です。
買収の最低目標株式数は2,035万1,654株、最大は2,379万501株です。
主要株主との合意
筆頭株主の宇部三菱セメントと第2位株主の太平洋セメント(5233)は、保有する株式全てを買付けに応じることで同意しました。
これにより、発行済み株式の42.94%が確保されます。
買収の期間と期待される効果
公開買付けは2023年11月10日から12月11日まで行われます。
買収により、両社の強みを組み合わせることで、技術力の向上、顧客基盤の拡大、そしてサプライチェーンの効率化を実現し、競争力と収益力の両面での向上が期待されます。
ピーエス三菱の市場ポジションと技術力
ピーエス三菱は、三菱グループの一員として、高度な技術力と信頼性を持つ企業です。
2002年の設立以来、特にプレストレストコンクリート(PC)を使用した橋梁施工では業界をリードしています。
PC技術は、長期的な耐久性とメンテナンスの低減を可能にし、老朽化インフラの更新や補修に不可欠です。
ピーエス三菱の強みは、このような技術的ノウハウに加え、三菱グループとしての豊富な資源へのアクセスにあります。
大成建設による買収は、ピーエス三菱のこれらの技術を統合し、さらなる市場拡大を目指す戦略的動きとなります。
買収が成功すれば、三菱グループからゼネコンが姿を消すことになり、業界内での勢力図の変化を意味しています。
建設業界の現状とピーエス三菱の役割
現代の建設業界は、都市部の再開発、製造業の拡大、及び国土の強靭化といったプロジェクトにより、強い受注需要を見せています。
ピーエス三菱のような企業は、これらの大規模プロジェクトを支える技術的基盤を提供することで、市場における重要性が増しています。
建設業界の成長と共に、ピーエス三菱の専門性はさらに価値を増しており、大成建設にとって魅力的な買収対象となっています。
大成建設の未来への投資
大成建設は、M&Aを中心とした成長戦略を推進しています。
2021年に設立されたM&A戦略部署は、中期経営計画で掲げる売上高の増加目標を実現するための重要なステップです。
ピーエス三菱買収は、大成建設が市場における競争力を高め、長期的に持続可能な成長を達成するための戦略的な選択と言えるでしょう。
このM&Aを通じて、大成建設は新たな技術、市場、そして顧客を獲得することを目指しています。
PS三菱、2023年上半期に純利益大幅増も通期予想は変わらず
上半期の堅調な業績
PS三菱は2023年4月から9月の上半期における連結決算を公表し、前年同期比で純利益が43.7%増の21億5100万円に達したことを発表しました。
この増益は、橋梁建設を中心とした土木事業と耐震性に優れた建築事業における売上の大幅な伸びによるものです。
経費増も売上総利益の増加がカバー
販売費および一般管理費の増加にも関わらず、売上総利益の増大がこれを補い、営業利益、経常利益、そして親会社株主に帰属する四半期純利益のすべてが増加しました。
2023年上半期の売上高は前年同期比21.3%増の576億6900万円、営業利益は44%増の33億1000万円、経常利益は40.8%増の32億2000万円に達しています。
通期予想は慎重な姿勢を維持
PS三菱は2024年3月期の通期予想を前期比で純利益1.6%増の38億5000万円とし、これを据え置きました。
第二四半期の進捗率は営業利益で57.1%と、過去6年の平均46%を上回っていますが、全体の売上高予想は7%増の1170億円、営業利益は1.5%増の58億円、経常利益は1.3%増の57億円と慎重な見通しを示しています。
これにより、業界内外の変動要因に対する慎重な姿勢を保ちつつ、安定した成長を目指すPS三菱の経営戦略がうかがえます。
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