不祥事で原田泳幸氏辞任後、進研ゼミが不振に陥ったベネッセ(9783)がMBOで立て直しを決意:1株2600円でTOB買収総額2700億円は日本史上最高額のMBO案件に

ベネッセホールディングスは、経営陣による買収(MBO)への転換を決定しました。

通信教育「進研ゼミ」の業績が低迷している中、企業の立て直しを図る重要な動きです。

ベネッセホールディングスは、スウェーデンの大手投資ファンドEQTと提携し、株式公開買い付け(TOB)を通じて非公開化し、より柔軟な経営改革を目指します。

TOBの概要

ベネッセホールディングスのTOBは、1株あたり2600円で実施されることが決定。

11月9日の終値1791.5円から45%相当808.5円のプレミアムを上乗せした価格です。

この価格設定により、全株式における企業価値は約2700億円となり、日本で実施されたMBO史上最大の規模となります。

初期段階では、EQTが特別目的会社(SPC)を設立し、TOBなどを通じてベネッセホールディングスの約83%の株式を約2080億円で取得します。

その後、残りの約17%はベネッセ創業家の資産管理会社が保有しており、これをEQTが完全子会社化する予定です。

TOBの完了後、創業家はSPCに出資することになっています。

最終的には、EQTが60%、創業家が40%の株を保有し、議決権ベースにおいて双方が均等な50%を持つという形になる予定です。

EQTの日本市場進出:ベネッセMBOを契機に

EQTは、スウェーデンの産業界と金融界におけるウォーレンバーグ家が基盤となって成立した大手投資会社です。

2021年に日本市場への拠点を確立し、2022年にはアジアの重要なプレイヤーであるベアリング・プライベート・エクイティ・アジアと統合しました。

このベネッセに対する経営陣買収(MBO)は、EQTにとって日本での初めての大規模投資案件となります。

この歴史的な取引を通じて、EQTは日本市場への本格的な進出を目指しています。

ベネッセMBOは、EQTの日本における投資戦略の重要な出発点であり、今後の日本市場における影響力の拡大に向けた一大ステップと見なされています。

進研ゼミ事業の逆境:個人情報漏洩事件からの苦難

ベネッセの通信教育部門である「進研ゼミ」は、2014年の個人情報漏洩事件によって大きな打撃を受けました。

この事件は、日本マクドナルドホールディングスから転じてベネッセの会長兼社長に就任した原田泳幸氏の在任中に発生しました。

この不祥事の影響は深刻で、会員数の減少に繋がり、結果的に原田氏は2016年に退任させられました。

この事件以降、「進研ゼミ」事業は継続的な苦難に直面し続けています。

特に、小学生から高校生を対象とする会員数は、2023年4月時点で前年比14万人減の160万人にまで落ち込んでいます。

これは、10年前と比較して約40%の減少を意味し、デジタル教材の導入などの改革策も会員数減少の流れを食い止めるには至りませんでした。

事業多角化とその限界

ベネッセは介護や保育事業への多角化を試み、リスク分散を図ってきました。

しかし、主力事業の落ち込みは深刻であり、これらの新規事業は営業利益の減少をカバーするには至っていません。

不採算事業の売却など構造改革を進めてきましたが、抜本的な立て直しには非公開化が避けられない状況となっています。

ベネッセの歴史と創業家の影響

ベネッセは1955年の創業時から福武書店としてスタートし、進研ゼミ事業で名声を得ました。

創業家の福武総一郎氏が長く経営の中心にいましたが、2014年に顧問に退き、その後を原田泳幸氏が引き継ぎました。

しかし、個人情報漏洩問題が発覚し、プロ経営者である原田氏による経営は短命に終わりました。

外部から招いたCEOが失脚した結果、約20%の株式を握る創業家が、現在に至るまで経営に影響力を持ち続けています。

まとめ

ベネッセホールディングスは、不振に苦しむ進研ゼミを抱えており、非公開化を通じての立て直しを目指しています。

EQTとの大規模な買収が、企業再生の新たな道となる可能性があります。

教育事業の再構築や、創業家の影響下にある経営の行方には、今後も注目が集まるでしょう。

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