米国最大の資産運用会社ブラックロックは、ただの資産運用企業に留まらない。その強みは、資産運用のITプラットフォーム「アランディン」にもある。アランディンは膨大な金融情報を活用し、顧客の複雑なリスクを即時に分析する能力を持つ。この存在感から、しばしば「ウォール街のアマゾン・ドット・コム」と評されることもある。
アラディンの実力
2023年3月、米中堅銀行シリコンバレーバンク(SVB)が破綻した際にも、アラディンはその能力を発揮した。株式や債券、さらには複雑な金融派生商品であるデリバティブのリスク分析において、アラディンの助けを借りる投資家が世界中で急増した。ブラックロックのCEO、ラリー・フィンク氏は、株主総会で「混乱の時代のために構築したもので、市場のショック時に我々の技術が使われるのは誇らしい」と述べた。米地銀の破綻が相次いだ際には、富裕層向けの利用が2倍以上に増えたことも言及された。
テクノロジーとしてのアラディン
ブラックロックは、1988年の創業時からリスクの分析・管理を重視してきた。特に2008年の金融危機や後の欧州債務危機、ウクライナ危機でも、アラディンの技術は広く活用された。同社の社員1.9万人のうち3分の1がアラディンに携わっており、テクノロジーサービス部門の売上高は約2000億円に上る。これは野村アセットマネジメント全体を上回る規模であり、今後も年10%以上の収入増加が見込まれている。
日本市場の課題と展望
一方、日本市場はこの分野で遅れを取っている。株式や債券など商品ごとの分析に重点を置いた縦割り発想が根強く、ポートフォリオ全体の分析・管理への移行が遅れているという指摘もある。テクノロジーを駆使した分析の高度化が求められており、特に個人顧客向けサービスでは「カスタマイズド・インデックス」が新たな分野として注目されている。これは標準的な分散投資に加え、個人の事情に合わせたダイレクトインデックスへの投資提案を行うものである。
まとめ
ブラックロックのアランディンは、ただの資産運用プラットフォームを超えて、資産運用インフラの「巨人」としての地位を確立している。日本市場も
このテクノロジー競争において遅れを取ってはならない。ブラックロックの成功は、テクノロジーを磨き続けることが、顧客からの信頼と受託者としての責任に直結することを示している。資産運用立国を目指す日本にとって、テクノロジーを巡る競争は避けて通れない道である。
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