超短期のオプション市場が米国で盛り上がりを見せており、この熱狂が日本にも波及しつつあります。
米国では24時間以内に満期を迎えるオプション「ゼロデイオプション(0DTE)」が投資家から注目を集めています。
一方、日本では取引単位を現行の10分の1にした「日経225ミニオプション」が2023年5月29日に上場します。
これらの動きは、オプションブームの到来を示しているのかもしれません。
オプション市場:米国の短期取引ブーム
米国の株式市場においてオプション取引の日次売買高は2020年から急増しており、現在では約4300万件に達しています。
中でも、24時間以内に満期を迎える「ゼロデイオプション(0DTE)」が特に注目を集めています。
この新たな投資手法は、少額の投資で高いリターンを目指すことが可能で、米国の個人投資家の間で広く受け入れられています。
オプション取引は、特定の商品(原資産)を一定の価格で将来のある日までに購入または販売する権利を売買する取引です。
「コールオプション」は買う権利、「プットオプション」は売る権利を指します。
売り手は買い手からオプション料を受け取り、買い手が権利を行使するときにはそれに対応する義務を負います。
米国の0DTEブーム:個人投資家の新たな挑戦
米国においては、0DTEが特に人気を博しています。
「ゼロ日」とは、実際には最終日に取引される1週間満期のオプションを指します。
例えば、Cboeグローバル・マーケッツのS&P500種株価指数連動の上場投資信託(ETF)がこれに該当します。
2022年の4月から5月にかけて火曜日と木曜日に満期が来る商品が追加され、週5日間で0DTEを取引できるようになりました。
0DTEは主に個人投資家に利用されています。
新型コロナウイルスの自宅待機期間中、若者たちの間で「ロビンフッド」などの投資アプリが普及しました。
手軽に取引ができ、その日のうちに結果が明らかになる0DTEは、その低価格と投機性により受け入れられました。
オプションは本来、投資家がリスクを制限する手段として用いられますが、0DTEはギャンブル的な要素が強く、繰り返し取引を行い、小さな勝ちを積み重ねて最終的な利益を目指す投資家が増えています。
「ボルマゲドン」:新たなリスクへの警戒
市場では、オプション取引による「ボルマゲドン2.0」のリスクが警戒されています。
「ボルマゲドン」とは、2018年のVIXショックを指す言葉で、VIX(ボラティリティ指数)が急騰し、大量の株式売りが引き起こされた事象の事です。
現状、0DTEの想定元本が1日あたり1兆ドルに拡大しており、例えばS&P500が5分間で5%下落するなどの事態が発生すると、関連取引により25%の暴落を引き起こす可能性があるとされています。
しかし、短期オプションは多くの投資戦略で使用されており、そのバランスが保たれているとの見解もあります。
また、一部の投資戦略が失敗したとしても、株式市場全体に影響が及びにくいともされています。
市場の意見が分かれる中、シカゴ・オプション取引所(CBOE)は新たなボラティリティ指数「VIX1D」を公表しました。
通常のVIXの算出には、満期まで1カ月程度のオプションの価格動向が使用されますが、0DTEの影響が反映されていないことから、米銀シリコンバレーバンクの破綻などのリスクイベントに対する反応が過去ほど鈍化しているとの指摘があります。
日経225ミニオプション:取引単位の小口化で投資家の選択肢が拡大
大阪取引所は2023年5月29日に、日経平均株価を基準とした「日経225ミニオプション」の取引を開始します。
これにより、「日経225ウィークリーオプション」の名称が変更され、取引単位も現行の10分の1に小口化されます。
この新しい取引形態は、投資家の選択肢を広げ、取引市場の拡大を見込むものです。
現状のオプション取引では、最低取引単位はオプション価格(「プレミアム」)の1000倍となっています。
例えば、5月19日時点のウィークリーオプションで5月第4金曜日に満期となる権利行使価格3万0750円のプットオプションでは、プレミアムが340円とすると、購入には1枚34万円が必要となります。
しかし、新設されるミニオプションでは、同じオプションを10分の1の3万4000円で購入できるようになります。
既存のオプションは個人にとって高額で使いにくいため、1枚数万円で購入できるようになれば、ハードルはぐっと下がり、取引拡大が期待できます。
大阪取引所がミニオプションの導入を決定した背景には、株式投資の小口化という潮流があります。
日本証券業協会の統計によれば、2021年度末の個人株主一人あたりの平均株式保有額は501万円で、4年連続で減少しています。
この傾向に対応するため、大阪取引所は「日経225ミニ」の10分の1取引単位の「日経225マイクロ先物」も導入します。
オプション取引は、市場の下落時に損失を抑制する手段や、市場が下落しているときでも収益機会を作ることができるメリットを提供します。
しかしながら、日本のオプション市場は依然として活性化していません。
日次売買代金をほぼ占める月次の「日経225オプション」の22年の売買代金は、13年比で3割減少しました。
週次の日経225オプションや個別銘柄オプションの取引規模は、数百万円から数億円程度で、事実上市場が存在していない状態です。
ミニオプションが市場の活性化に寄与するかどうか、個人投資家の動向が注目されています。
現在、日経225オプションの取引における個人投資家の割合は約20%ですが、ミニオプションの導入により利便性が向上すれば、その割合が半数近くに増加する可能性があります。
米国でも、20年頃からオプションの小口化が進行しており、それに伴い「0DTE」などの新商品も登場しました。
米シカゴ・オプション取引所の指数オプションの取引規模は日経225オプションの20倍以上に達しています。
ただし、個人投資家の活動が活発化したとしても、大口投資家の関心が不足している場合、市場の流動性が確保できないというリスクもあります。
市場の拡大には、個人投資家だけでなく機関投資家もオプションへの理解を深めることが求められます。
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