血統入門

競馬は究極のブラッド・スポーツ

競馬は血統のスポーツ、ブラッド・スポーツと呼ばれる。
生まれた仔馬は全てスタッド・ブック(血統書)に記録され、そのことがサラブレッドである証となる。
血統はサラブレッドそのものであり、競馬の過去・現在・未来を見通すための、非常に大切な手がかりとなる。

競馬の予想には馬体や状態、調教タイム、馬場状態、枠順、展開予想、ローテーションなど様々な要素があるが、こうした競馬すべての要素に絡まるのが「血統」である。
競馬の予想を、より血が通ったものにするためのファクターこそが「血統」といえる。
速いタイムを出すこと、枠順による巧拙、最適なトレーニング、調教、全て血統によって傾向がでる。

サラブレッドは人間のアスリートよりもはるかに厳しい基準で淘汰が行われており、競走馬は人間の何倍速ものスピード人生のサイクルが進む。
サラブレッドは、その誕生に至るまでの血筋と競走成績の記録の積み重ねによって存在している。
この記録こそが血統であり、世界中の生産者(ブリーダー)は活躍馬の血統を読み解き、それを手がかりにしてより強い馬を生み出そうと努力を重ねている。
ヨーロッパやアメリカをはじめ、世界各地で多種多様な競馬が行われているが、サラブレッドは血統という共通言語を持つことで、国境を超えて進化を遂げてきている。

現役時代にほとんど活躍出来なかった競走馬でも、種牡馬や繁殖牝馬として優秀な子供を送り出すケースも多く、血統はとても奥が深く面白いファクターである。

生産から引退まで、サラブレッドの経済性

配合・誕生

良血馬ほど高額で売れる可能性が高まるが、人気種牡馬ほど種付け料も高額となる。
人気種牡馬を配合する際には、流産などのリスクなども含めて検討され、場合によっては、血統構成が同じ人気種牡馬の全兄弟馬が、代替種牡馬として評価されることがある。
場合によっては、半兄弟馬でも血統を買われて種牡馬になれるケースがある。

売買

日本では、生産者と馬主が直接売買する「庭先取引」が大半を占めていたが、近年はセリ(市場)出身の活躍馬も増えてきている。
良血馬の場合は、生まれる前から注目を集め、良血当歳馬の多くは、夏までに庭先取引で売却先が決まる。
7月から秋にかけて開かれるセリでも良血当歳馬が高値で落札されるが、セリでの取引頭数は1歳馬の方が多い。
10月後半以降は、主に地方競馬に入厩する1歳馬の取引が行われる。
それでも売れ残った2歳馬については、4-5月にトレーニングセールが開かれるが、ここまでくると血統以外に馬の動きや走破タイムも価格に大きく影響する。

育成・入厩・出走

育成先や入厩先は生産者や馬主の人間関係によって決められるが、近い血統の馬は同じ育成施設や厩舎に預けられることが多い。
過去にその競走馬の父母馬や兄姉馬を担当したことによる経験値が、育て方や出走レースの選定に活かされる事が期待されている。

引退・繁殖

血統が最大の影響力を発揮するのは、実は引退のタイミングとなる。
ここで繁殖入りするのか、乗馬や研究馬、使役馬などになるかが決められる。
種牡馬になれるのは、残念ながら1世代で1%にも満たない狭き門。
毎年7,000頭弱のサラブレッドが登録され、その約半数が牡馬、そして競争生活を終えて種牡馬となれるのは多い年でも30頭程度にすぎない。
毎年、約250頭いる種牡馬たちが約1万頭いる繁殖牝馬を奪い合い、己の子孫を残そうとしのぎを削っている。
その中で200頭以上の繁殖牝馬を集める人気種牡馬がいる一方で、いつの間にか姿を消していく種牡馬も。
約250頭の種牡馬のうち、約60~80頭は輸入種牡馬となっている。

一方で、牝馬の場合は基本的に1年で1頭しか産めないという制約があるため、比較的高い割合で繁殖入りできる。
競馬とは究極の一夫多妻制によって成り立っているスポーツであり、この事によって進化と淘汰を高速で繰り返している。

父系 サイアーライン

種牡馬とは、サラブレッドを生産するために種付けする牡馬のこと。
競走成績が優れた馬、血統の優れた馬のみが選ばれ、一般的には種牡馬のみを集めた種馬場に繁用されている。

サラブレッドの父、父の父、父の父の父、と遡っていく血筋のことを、父系・サイアーラインと呼ぶ。
血統予想において最優先でチェックすべき情報であり、その競走馬の特徴を把握するための最重要ファクター。

母系 ファミリー 牝系

母系はファミリーや牝系と呼ばれ、サラブレッドの母方を遡る血筋を指す。
母、祖母、曾祖母らと、その産駒の成績や特徴から、「ファミリー」としての能力や可能性を探る。
種牡馬は毎年多数の産駒を送り出すので能力を判断しやすいが、1年に1頭しか産まない繁殖牝馬では、その産駒だけでは血統の特徴が掴みづらいため、「ファミリー」をチェックする必要がある。
現在の日本では、ディープインパクトを筆頭にサンデーサイレンス系の産駒がかなり多いので、牝系の特徴を把握する事も非常に重要になってくる。

母の父 ブルードメアサイアー BMS

そこで重要になってくるのが、母の父・ブルードメアサイアー(BMS)
優れた種牡馬は、必然的に数多くの繁殖牝馬を送り出すことになるため、母の父としても大きな影響力を持つ。
配合では、母の父としての産駒の成績や、父の種牡馬との相性の良さ「ニックス」も重視される。

生産者 ブリーダー

生産者「ブリーダー」は繁殖牝馬を所有してサラブレッドを生産し、セリ市場や馬主に売却する生産牧場を経営する人。
馬主「オーナー」が自ら生産牧場を持ち、生産した馬を走らせるケースは「オーナーブリーダー」と呼ばれる。
サラブレッドの配合決定には、生産者や馬主の意向が色濃く反映されるため、血統予想においてはこの人間の要素も非常に重要となってくる。

インブリード 特定の血を強調する近親交配

インブリードとは、父系・母系の5代前までに同一の祖先を持つ配合。
インブリードさせた血の個性を引き継いだ産駒が出る確率が上がると言われているため、同一の祖先馬の優れた性質を引き出すために行われる。

ダービー馬の父=主流血統=トップサイヤー=ディープインパクト

近年のダービー馬は、18年ワグネリアンから21年のシャフリヤールまで、父ディープインパクト産駒が4連勝中で、近年圧倒的な存在感を見せつけている。
ディープインパクトの初年度産駒が3歳クラシックを迎えたのが2011年で、翌2012年にはディープブリランテがダービー制覇して以来、黄金時代が続いている。

ディープインパクトは中央コースの芝1600,2000,2400mの軽い馬場が大の得意で、すると日本ダービーやジャパンカップ、安田記念に天皇賞秋と、各路線の王者が決まる大レースで勝てるからこそ、リーディングトップをキープ出来ている。

反対に、上位リーディング馬は、ダートや道悪などの「反主流馬場」で走らないので、ここが血統で穴馬を狙う大チャンスとなる。
コース形態(直線の長さ,坂の有無)によっても傾向は異なってくるし、血統によって成長力や、ローテーション(鉄砲駆け、叩き良化)、前走からの条件変更(距離延長・短縮、芝ダート替わり)、といった条件への適応力に違いが出てくる。

日本型・米国型・欧州型

全ての血統はどの国・地域で強さを発揮するのか、大きく「日本型」「米国型」「欧州型」に分ける事が出来る。
国・地域の競馬によって、求められる能力の方向性が異なるため、それぞれの国・地域で強い血統が異なる。

当然ながら、日本競馬においては「日本型」血統がリーディング上位に君臨し、レースでも人気を集める。
そんなディープインパクトのような馬が凡走するようなレースで米国型や欧州型の血統を狙う事によって、大波乱のレースを狙い撃つ事が可能になる。
人気を集めるディープインパクト産駒が苦手な道悪・ダート・小回り・スローペースなどの条件が揃ったレースで、この「日米欧」を切り口にした血統で予想する事によって、人気に関係なく好走する可能性が高い馬を見抜けるようになる。

日本型

サンデーサイレンス系に代表される、芝の中長距離の良馬場に強い血統。

米国型

ミスタープロスペクター系に代表される、ダートの短距離に強い血統。

欧州型

サドラーズウェルズ系やダンチヒ系に代表される、タフな馬場に強い血統。

4つのサイアーランキング

1年を通じて産駒が獲得した賞金の合計額を集計してランキングにしたものが「サイアーランキング」
ランキング上位にランクインされると、その実績が評価され、よりよい繁殖牝馬と配合されるようになり、更に好成績を残しやすくなり、サイアーランキングが上がりやすくなる、という好循環が生まれる。

リーディングサイアー

1年間で産駒の獲得賞金が最も多かった種牡馬。
種牡馬を評価する最も基本的な物差しとなる。
主要なG1レースを筆頭に、重賞レースに強い馬ほど順位が良い。

ブルードメアサイアー

1年間で母の父として孫世代の産駒の獲得賞金が最も多かった種牡馬。
基本的にリーディングサイアーとリンクしており、リーディングサイアーとニックスがある種牡馬も順位が良い。

2歳リーディングサイアー

1年間で、2歳戦の獲得賞金が最も多かった種牡馬。
上位になる種牡馬ほど、産駒の仕上がりが早いといえ、早熟血統だとであるとも判断できる。
馬主の立場からすると、競走馬の購入金や預託料などを早く回収したいため、産駒の仕上がりが早くて2歳戦から活躍出来る血統は重視される傾向がある。

ファーストクロップ・リーディングサイアー

その年に初めて産駒がデビューした新種牡馬のうち、2歳戦で最も多くの賞金を獲得した種牡馬。
初年度から活躍馬を出せれば、より良い繁殖牝馬を集められるため、この初年度の結果が種牡馬の将来に大いに影響する。

インブリード 特定の血を強調する

父系・母系の5代前までに同一の祖先を持つ配合が『インブリード』で、近親交配のこと。
インブリードさせた血の個性を引き継いだ産駒が出る確率が上がるといわれており、同一の祖先馬の優れた性質を引き出すために行われる。

例えばリーディングサイアー10回獲った「ノーザンテースト」のインブリードは「レディアンジェラ3×2」と表記される。
インブリードは馬名と父系の世代数×母系の世代数で表記される。
ノーザンテーストの場合、3(祖父の母)×2(祖母)がレディアンジェラということになる。

奇跡の血量

3代前と4代前に同じ祖先を持つ配合(4×3 or 3×4)のインブリードは、「奇跡の血量」といわれている。
この血量を持つ名馬が生まれたことから古くから伝わる格言ではあるが、明確な根拠はない。

アウトブリード 血統を活性化させる

父系・母系の5代前までに同一の祖先を持たない配合が『アウトブリード』で、異系交配のこと。
ある特定の血統が濃くなりすぎることを避け、血統を活性化させる効果を期待して行われる。

ディープインパクト、ステイゴールド、ハーツクライ、ネオユニヴァース、ジャスタウェイといった名馬たちは、全てアウトブリードである。

ニックス 配合の相性を示す

種牡馬の血統繁殖牝馬の父(母の父)の血統の相性の良さが、『ニックス』。
明確な基準はなく、特定の組み合わせで優秀な競走成績を残す競走馬が多数出ると、その組み合わせは「ニックス」と認識され、優秀な教祖欧ばを生み出す配合として定着していく。

「父ステイゴールド×母父メジロマックイーン」のニックスからは、ドリームジャーニー・オルフェーヴル・ゴールドシップという名馬が産まれている。

兄弟馬・姉妹馬

同じ繁殖牝馬から産まれた競走馬は、『兄弟馬・姉妹馬』となる。
種牡馬だけが同じ場合は、兄弟・姉妹とはいわない。
父も母も同じなら、全兄弟・全姉妹、父だけ異なる場合は半兄弟・半姉妹となる。

近親扱いするのは同じ母系から産まれた競走馬のみで、母の兄弟馬・姉妹馬はおじ・おば、母の姉妹馬の産駒はいとことなる。

日本の白毛一族は突然変異で産まれた

日本の白毛馬は、黒鹿毛のロングエースと栗毛のホマレブルから産まれたハクタイユー(1979年生)が最初。
これは突然変異だと思われるが、その後ハクホウクン、ハクバノデンセツへと白毛が伝えられた。

その後、青鹿毛のサンデーサイレンス、鹿毛のウェイブウインドから、突然変異でシラユキヒメ(1996年生)が産まれ、シラユキヒメが白毛を多くの産駒に伝え、ユキチャン・マーブルケーキ・ブチコ・シロニイなどの白毛一族が誕生。
そして、シラユキヒメの娘ブチコから、無冠の桜花賞馬ソダシが産まれた。
極めて珍しい突然変異の白毛馬を継承させ、ついにはクラシック制覇する名馬まで繋いだ金子真人オーナーは、偉大なるリーディングサイアー2大巨頭となっているディープインパクトとキングカメハメハの馬主でもあり、現代競馬界の血統を支配する頂点の存在となっている。

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