2021年確定申告の変更点
電子申告で10万円の追加控除
2020年までの確定申告では、青色申告で確定申告を行った際に適用される「青色申告特別控除額」が65万円、誰でも必ず適用される「基礎控除」が38万円で、合計で最大103万円の控除を受ける事ができた。
しかし、2021年の確定申告から「青色申告特別控除額」65万円から55万円に減額となる。
代わりに所得が240万円以下の場合に「基礎控除」38万円が48万円に増額される。
さらに、「e-taxを使って電子申告」すればさらに10万円の追加控除が受けられる。
実質は、e-taxを利用しない青色申告事業者に対する控除の減額といえる。。
ちなみに電子申告を行わない場合でも、「電子帳簿保存法対応の会計ソフト」を使用して「電子帳簿保存の承認申請書」を税務署に提出すればe-taxを利用する事なく10万円の追加控除を受ける事が可能だが、電子帳簿保存の承認申請書自体が分量があって作成に手間が掛かるため、現実的な対応策ではない。
スマートフォン申請について
ちなみにスマートフォンでも電子申告は可能で、2019年から既にandroid端末限定で「スマート申告」サービスが登場していた。
2020年からiPhoneでも利用可能となったため、より一層の利用者増加が見込まれている。
所得控除に関しても、2019年までは「医療費控除」と「寄附金控除」のみしか利用出来なかったが、他に「生命保険料控除」や「小規模企業共済等掛金控除」など14種類ある所得控除も新たに利用可能となっている。
源泉徴収票などの添付不要
これまでも電子申告の場合は提出不要だったが、紙書類での申告に際しても不要となった。
ただ、添付が不要となっただけで、ちゃんと手元にはこの書類を準備して、参照の上で確定申告書を作成する必要がある。
配偶者特別控除を受けるための条件変更
配偶者特別控除とは、配偶者の年間所得金額が一定の所得の場合に適用される控除。
この控除が適用されるための「配偶者の所得」が年度ごとに異なるため、注意が必要となる。
2021年は「48万円超133万円未満」となる。」
2019年は「38万円超76万円未満」2020年は「38万円超123万円未満」だった。
納税者本人の年間所得金額が1000万円を超える場合には適用されない。
期限の1ヶ月延長
当初予定の「令和3年3月 15 日(月)」から「令和3年4月 15 日(木)」までに延長されている。
2020年と同様にコロナウィルスの影響によるもの。
freee概要
4478 フリー(株)が提供する有料クラウド会計ソフト
従来の会計ソフトは、PCにインストールしてオフラインで使用するものが主流だった。
これに対して、クラウド会計ソフトはインターネットを経由して利用可能となっている。
IDとパスワードさえ入力すれば、どのPCからでも、スマートフォンからでも利用可能となっており、場所を選ばずいつでもどこでも操作可能となっている。
通信は「256bit暗号化通信」で暗号化されており、通信内容が傍受されるリスクは低い。
データはfreeeのクラウドサーバに保存されているので、個人でバックアップを取って管理するコストも削減できる。
従来の会計ソフトでは一度インストールしても、その後バージョンアップが実施されると、その都度ソフトを購入し直す手間が発生していたが、クラウド会計ソフトであればバージョンアップを意識する事なく、常に最新のサービスを受ける事ができる。
個人事業主用の料金プランは3通り
スタータープラン 月額980円
- 確定申告書の作成、出力
確定申告書の作成と出力が可能で、各種控除や還付にも対応している。 - 銀行口座やクレジットカードの同期
銀行口座やクレジットカードから直接明細を取り込む事が出来る。
入出金やクレジットカードの利用履歴が自動で会計ソフトに反映されるため、紙の明細を見ながらソフトに入力するという業務をまるごと削減できる。
収支入力の効率が大幅に改善する。 - 請求書の作成
- メールやチャットサポート対応
スタンダードプラン 月額1980円
- スタータープランの全機能
- メール、チャットサポートについて優先対応
スタータープランの顧客よりも優先して対応してもらえるようになる。 - 領収書の写真から仕訳データ自動取得
スマホから領収書を写真で撮れば、自動で取り込める。
日付や金額も自動で推測してくれる。
枚数制限は無く、無制限。
レシート類をスマホのカメラで取り込む、scansnap等のスキャナで取り込む、書類データを取り込む、Dropboxと連携して自動でDropbox上のレシート類を取り込む、といった事が可能。 - 消費税申告
- 月次推移、資金繰り、売掛レポート、買掛レポート
売上や支出を可視化するレポートが自動で生成されるため、経営課題の把握にも役立つ。
プレミアムプラン 月額3316円
- スタンダードプランの全機能
- 電話サポート
- 税務調査サポート補償
もしも税務調査を受ける事になった際、税理士を無料で紹介した上、最大50万円までの税理士費用を補償してくれる。 - 乗り換えサポート
他社会計ソフトからの移行に際して、データ移行や初期設定を代行してくれる。
青色申告のメリット
青色申告は、日々の取引を「複式簿記」という少々手間の掛かる方法で帳簿を作成する必要がある代わりに、追加で控除を受けたりする事が出来る。
そもそも、青色申告のデメリットである「複式簿記」の面倒臭さの大半は、freeeを利用すれば解決出来るので、積極的に検討する価値がある。
メリットは以下の4点
- 青色申告特別控除の適用
- 家族への給与を経費扱いに
- 赤字の繰越し
- 30万円未満の資産を費用として一括計上可能
フリーランスや自営業はマジメに税金払いすぎ
フリーランスとは「業務委託」の形で、企業や個人が外部に発注した仕事をその都度引き受ける人のこと。
自営業者は「自分で事業を営んでいる人」のこと。
「個人事業主」は税法上の分類で、税務署に個人として開業届を提出して「こんな職業や事業をしています」と申請した人。
法律的には「個人事業主」だけが正式な名称であり、フリーランスや自営業と名乗る事は基本的に自由なので、好きな呼び方を採用すればいい。
「収入」と「課税所得」の違い
世の中では「年収一千万円」「年商一億円」など、その人が仕事で稼いだ収入の総額や売上高に注目して報道されたりする事が多い。
しかし、例え総額一千万円稼いだとしても、必要経費として一千万円以上の支出があった場合には、手元にお金は残らず赤字となってしまう。
税法上で重要なのは「収入」ではなく、「収入」から経費や各種控除を引いた「所得」である。
フリーランスや自営業の場合、仕事相手との飲食代といった「接待交際費」、文房具やコピー用紙などの「消耗品費」、事務所賃料などの「地代家賃」まで、計上出来る経費もフリーダム。
仕事のために使ったお金は、かかった分だけ経費で落として所得を減らせる、これがフリーランスの特権!
仕事絡みの領収書はこまめに集めて必要経費として計上する事が大事になってくる。
freeeを使っているのであれば、登録してある口座やクレカを使って取引する事を心がければ、しっかり経費を記録して節税につながる。
嘘の申告や不正な操作によって納税を免れる「脱税」は犯罪だが、実際に業務で使った経費や税法上で認められた控除をフル活用しながら「節税」に励む事は正当な権利。
勘定科目
税務署に確定申告する際に、白色申告の場合は「収支内訳書」、青色申告の場合は「青色申告決算書」を申告と一緒に提出する。
この書類では、「経費を何に使ったか」を項目ごとに分けて申告する。
経費を何に使ったのかという各項目の事を「勘定科目」という。
決算の中身を分かりやすくするためのタイトルやタグのようなもの。
入金や出金の際に、「どのような入金の内容であったか」「どのようなものにお金を使ったのか」を、誰が見ても分かるようにするために利用する。
税務署や金融機関に決算書類を提出した際に、相手が会社の状況を理解出来るようにしておく必要がある。
きちんと勘定科目を設定して、様々な経費をどの「勘定科目」に分けていくのかが、スマートな節税の第一歩となる。
また、勘定科目をきちんと入力しておけば、自身の経営判断のためにも役立つ。
「売上高1000万円、費用900万円、利益100万円」とだけ表示されるよりも、
「売上高1000万円、材料の仕入費300万円、アルバイト代400万円、家賃200万円」といように登録しておけば、すぐに「アルバイト代掛かり過ぎてるからシフト調整しよう」といった具合に、経営判断を下す事が可能となる。
AIによる勘定科目推定
freeeであれば、銀行口座とクレジットカードを「口座」として登録し、「自動で経理」機能を利用すれば、AIが自動で判断して勘定科目を推定してくれる。
念の為、自分の目でAIの推定した内容を確認し、間違いがあれば手動で修正して取引を登録すればいい。
さらに、自動登録ルールで、〇〇への支払いはこの勘定科目で登録、という具合にルールを設定してしまえば、完全自動で取引登録が完結する。
勘定科目の名称リスト
資産
- 現金:硬貨、紙幣、郵便為替証書、配当金領収証、送金小切手など
- 売掛金:取引先に商品やサービスを掛売りした時の代金を受け取る権利(1年以内に回収が見込まれるもの)
- 商品:在庫商品(店頭に並んでいる商品、倉庫に保管している商品)
- 建物:販売やサービスの提供を行う店舗、事務所などの建物
- 車両運搬費:乗用車、トラック、バイクなど
負債
- 買掛金:掛けで商品を仕入れた際の代金を支払う義務
- 短期借入金:返済期限1年以内の銀行借入れ、手形借入金、当座繰越など
- 長期借入金:返済期限1年以上の銀行借入れ、手形借入金、当座繰越など
- 未払金:水道光熱費の未払金、クレジットカード払いなど
- 前受金:内金、手付金、前渡金など
収益高
- 売上高:商品の販売、サービス提供で得た収益
- 受取利息:有価証券利息、貸付金利息、普通預金利息など
費用
- 仕入高:商品の仕入代金、仕入れ時に発生する運賃など
- 外注費:業務委託費
- 給与手当:正社員の給料
様々な控除
控除とは、一定の条件を満たした場合に、課税対象となる金額から一定の金額を差し引く事が出来る制度。
条件を満たすように帳簿付けしていく事によって、お得に節税が出来る。
控除には大きく分けて「所得控除」と「税額控除」がある。
「所得控除」は所得から控除するもの、「税額控除」は所得から計算された税額から控除をするもの。
所得控除一覧
- 雑損控除:災害や盗難などによる損害
- 医療費控除:1年間にかかった通院費や薬代などの医療費
- 社会保険料控除:健康保険料、厚生年金保険、国民健康保険料、国民年金などの支払い
- 小規模企業共済等掛金控除:小規模企業共済の掛金やiDeCoなどの個人型確定拠出年金加入者掛金
- 生命保険料控除:生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の最大12万円分
- 地震保険料控除:地震保険料の最大5万円
- 寄附金控除:特定の団体や地方自治体などへの寄付金
- 障害者控除:本人や配偶者、扶養親族が一定の障害者に該当する場合に一定額
- 寡婦・寡夫控除:納税者が所得税法上の寡婦・寡夫である場合に、27万円
- 勤労学生控除:学生で合計所得金額が65万円以下の場合に、27万円
- 扶養控除:扶養親族がいる場合に一定額の控除、一般扶養親族38万円、特定扶養親族63万円、老人扶養親族48万円、同居老親58万円
- 配偶者控除:控除対象者の配偶者がいる場合に一定額
- 配偶者特別控除:配偶者控除の適用が受けられない場合の控除
- 基礎控除:合計所得金額が2400万円以下の場合、48万円
freeeで作成出来るレポート
入金管理レポート
売掛金の入金予定や滞留の状況が確認可能で、「債権一覧」と「年齢表」という2つの機能が利用出来る。
債権一覧では、個別の売掛金の情報を一覧表示し、取引先ごとや決済期日ごとに売掛金の状況を確認することが出来る。
年齢表を使うと、取引先ごとの売掛金の金額を、回収サイトに則り正常に回収出来ているのかどうか確認出来る。
支払管理レポート
入金管理レポートとは逆に、今どれだけの買掛金があり、いつまでに支払わなくてはいけないのかを把握するための機能。
入金管理レポートと同じく、「債権一覧」と「年齢表」の2つの機能で確認出来る。
収益レポート
期間などを指定し、取引先別や月別に売上金額をグラフや表形式で確認出来る。
どの取引先の売上が大きいのか?何月に売上が減っていたのか?、といった情報を簡単に確認出来る。
費用レポート
取引先別の費用の推移、品目ごとの費用の比率などが確認出来る。
急激に費用が増加している取引先や、特定の品目への支出が突出していないかなどを、視覚的に把握出来る。
損益レポート
取引先別の損益状況を時系列で確認したり、費用・収益の発生状況をグラフで見る事が可能。
赤字の得意先に早期値上げを要求したり、逆に黒字になりすぎえいる取引先に追加のサービスを提供するなど、対策が打つことが出来る。
現預金レポート
どれだけのお金がいつ動いたのか、その時点で残高はいくらだったのか、という現預金の動きを口座別に確認出来る。
資金繰りレポート
今後の資金の出入り予定はどうか、という現在から将来に向けての資金の動きを予測するために、過去から将来までの資金の動きをグラフで簡単に確認出来る。
入出金の情報を勘定科目だけではなく、取引先別や品目別に表示する事も可能になっており、今月はどういった勘定科目で一番お金を使ったのか、今後のお金の出入りによって資金ショートを起こさないか、といった確認が可能になる。
資金繰りは事業の生命線、資金繰りレポートを活用して倒産を防ぐ事が大事となってくる。
請求書の作成
freeeでは、ガイドに従って直観的に操作し、項目や金額を入力していくだけで、請求書も簡単に作成できる。
スマホからも作成出来るので、出先で金額の合意が出来次第、その場で請求書を発行するといった事も可能。
作成した請求書の情報は売掛金として自動で登録される。
さらに、銀行口座と同期しておけば、入金されたかどうか自動で予測して登録してくれるため、売掛金の消込を確認する手間が大幅に軽減される。
請求書を送付するにあたって、メールへ添付する事はもちろんのこと、freeeのサービスで紙の請求書を郵送する事も可能!
印刷封入発送すべて込みで1通150円(税抜)!
なので、請求書の発送も全部コミコミでfreeeのお任せしてしまえる。
金額のズレや二重計上に注意
決算をする際によくある間違いとして、二重計上がある。
レシートを基に経費を計上したのに、更にクレジットカードの明細を取り込んだ際に、計上済みの経費を再度登録してしまうミスがもっとも一般的。
金額が大きな取引であれば注意出来るが、数百円の取引までは気が回らずについついミスしがち。
現金払いのレシートとクレジットカード払いの明細を完全に分けて管理し、
「現金で払った時はレシートから手動登録」「クレジットカードで払った時はfreeeの機能で明細を取り込んで登録」というようにルールを明確化しておく必要がある。
さらに、freeeには二重計上を事後的に発見するための「重複チェック機能」がある。
「同じ日、同じ金額の取引」を自動的に探す事が出来るので、効率的にチェックが可能となる。
法人成りについて
仕事が軌道に乗って収入が激増したり、従業員を雇うようになったりしてきたら、個人事業主から合同会社をや株式会社を設立する「法人成り」を考える人が増えてくる。
法人にすると役員報酬に対して給与所得控除を適用出来るなど税金面のメリットがある。
社会的信用も増すので、受注する仕事のスケール拡大も期待出来るようになる。
反面、法人設立には株式会社で約20万円、合同会社でも約6万円の開業費用が必要となる。
設立後には、例え赤字でも法人住民税の均等割を年間7万円(自治体によってはそれ以上)がかかる。
税の申告が複雑になるので、税理士を雇う必要性も増えてくる。
代表取締役一人の会社でも、社会保険は原則加入しなければならない。
一人でも従業員を雇えば、社会保険に加えて労災保険、雇用保険への加入義務もある。
なので、ある程度のスケール、一般的には課税所得500万円以上になれば税金面でのメリットが出てくると言われている。
年間の売上高が1000万円を超えるなどの条件を満たすと、2年後から消費税の支払い義務が発生するので、そこで法人成りをする人も多い。
個人から法人という別人格になると、消費税の納付期限をさらに2年間延ばせるというメリットもあるため。
法人成りを考えるのであれば、売上高が1000万円を超えて2年後、の直前がベストタイミングといえるかもしれない。
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